一般社団法人日本セーフコミュニティ推進機構(JISC)
セーフコミュニティとは

セーフコミュニティは「まちづくり」から「まちそだて」へ

はじまり

「セーフコミュニティ」とは、1970年代にスウェーデンの地方都市で始まった「安全なまちづくり」の取組です。その後、北欧の周辺国を経て世界の各国に広がり、1989年に認証制度が始まりました。これまで世界で400以上の自治体やその一部が認証されてきました。

日本のセーフコミュニティ

日本では、2006年に京都府亀岡市が初めて取組を開始して以来、少しずつ取組む自治体がふえてきました。
日本の特徴は、ケガや事故を減らすことだけを目的とするのではなく、近年その重要性が高まっている「協働のまちづくり」を進めるためのツールとして活用されている点です。

協働のまちづくりは全国的に進められていますが、セーフコミュニティは、行政主導ではなくコミュニティのオーナーシップ(「自分たちのまちは自分たちで」という意識・姿勢)にもとづいたまちづくりを進めている点で関心が高まっています。

セーフコミュニティによって、まずは市民だれもが必要とする「安全・安心」な生活・まちづくりに取組み、そのノウハウを他の分野・領域にも活用していただくことが当機構の願いです。実際、SCで得たノウハウをSDGsやコロナ対策に活用している事例が国内外でみられています。

取組と特徴

「セーフコミュニティ」の特徴は、コミュニティのだれにとっても共通して重要な「安全」の向上に向けて「体や心への危害を未然に防ぐ」という視点から取組む点です。
具体的には、取返しがつかないような体や心への危害をもたらすリスク要因を把握し管理することで、地域のだれもが辛い思いをすることなく、健やかに生活できるまちを育てていくことです。

取組み自体は、決して難しくありません。日本ではこれまでも行政、地域、個人といった様々な立場で地域の安全・安心のための取組みが進められています。
それらを整理し、組み合わせる(横グシを通す)ことが基本です。従来から対策が活発であれば、それだけ組み合わせたりつなげる取組が増えるので、より大きな成果が期待できます。
また、まだ対策がない場合は、みんなで知恵を出し合って、力を合わせて効果的・効率的な対策を考えていきます。(地域協働)

もう一つの特徴は、進め方です。①分野横断的協働体制、②科学的根拠に基づく取組みの推進、③取組みの成果の検証(振返り)の3つの要素をこれまでの取組みに組み込みます。(PDCAサイクルの運営)
そして、これらの活動を通して、「地域の力」を育てていきます。(地域力の向上)日本では、自然災害の頻発化・甚大化が進むなかで自助や共助が今まで以上に重要になっています。しかし、地域においては、少子高齢化による人口減少などの影響で、地域の力」が衰退している自治体が増えています。限られた社会資源でどのようにまちの自助・共助を確保していくのか、は地方自治体の大きな課題となっています。

既存の社会資源を活用しつつ、これらの特徴を具現化していくために、セーフコミュニティでは、「6つの指標」があります。(*1)
これらの指標を満たしていることがセーフコミュニティの条件となります。

  1. 指標1:ガバナンス-地方自治体の行政体制と連動・融合した、分野横断的な組織が持続的な傷害予防及び安全向上の取組み(を推進する)
  2. 指標2:サーベイランス-問題把握、リスクアセスメント、予防対策立案のために外傷及びその原因に関するデータを収集・分析し、その結果を周知させる仕組み(を設置・機能させている)
  3. 指標3:包括性-傷害予防・安全向上の好事例をベースとした、全ての性別・年齢・環境を対象とした取組み(を推進している)。
  4. 指標4:脆弱集団-弱者集団・ハイリスク集団及び環境を対象とした取組み(を推進している)
  5. 指標5:評価-取組みのプロセスと効果の測定及び継続的なセーフコミュニティのプログラムとプロジェクトの改善(を実施している)
  6. 指標6:ネットワーク-国内・国外のセーフコミュニティネットワークに継続的に参画(している)
(*1)2022年に指標の改正が行われ、7指標から6指標となりました。(2022~2023年は移行期)

成果・メリット

少子高齢化が急速に進むなか、地方自治体においては財政難は人材不足に直面しています。一方で、地域のニーズは多様化・複雑化しています。さらに、多発化する自然災害や新型コロナウイルスのように新たな問題も発生しています。
そのため、将来向けて、今のうちから新たな課題にも対応できる「地域力」を育てることがとても重要になっています。

地域力は、すぐには育ちません。セーフコミュニティは、「安全・安心」を切り口に、下記を通して「地域力」を高めていく取組みといえます。

①取組の効率化(協働体制・PDCAサイクルの導入)
②地域力の育成(リーダ―シップ、オーナーシップ、パートナーシップの向上)
③社会損失の軽減(人材育成、経済効果の向上 など)

課題(チャレンジ)

ただし、現時点の日本においては下記のような課題(チャレンジ)もあります。
そのなかで、日本にあった取組みモデルを構築していくことが大切です。

①行政主導では、行政の制度(縦割り、職員の異動など)が壁になる場合がある
②地域・市民のオーナーシップ・パートナーシップが育つまで、行政の負担が大きくなる場合がある
③成果を得るまでに時間を要する場合がある(例えば、制度を変える必要がある場合など)

これらのチャレンジを通して、上記のメリットを享受することは、これからも市民が住み続けたいと思う「まち」に育てていくためにとても重要だと考えています。
つまり、セーフコミュニティは、「市民みんなで自分たちのまちを育てていく」取組ととらえています。


更新日:2021年5月5日